ピックアップにだってひと工夫

そういえば、待ち合わせ場所って考えてましたか？ せっかくのドライブですから意中の女性の家までお迎えに上がるのが筋ってもんですが、お相手がまだ狙われたくないという、やや警戒態勢にある現状では、どこか別の場所にピックアップポイントを設定したいところです。
せっかくですから、待ち合わせもちょっとしたデートのスパイスにしてみましょう。

たとえば、お相手の最寄り駅のロータリーなんかで待ち合わせをするとしましょう。その時に敢えて、敢えてですよ、少しだけ見つけにくい微妙な場所をピックアップポイントに設定してみます。
「ロータリーの出口近くで、タクシー乗り場の少し手前」とか。

どうしてそんなことをするかといえば、ちょっとした不安の演出と、成功した時の盛り上がりを期待してのことです。
デートの最初の1時間くらいは、どうしてもぎこちなくなってしまいがちです。女性は言うに及ばず、男性のあなたにだってドライバーとしての責任と、エスコートをしなくてはならないというプレッシャーがありますから。
だからこその「待ち合わせゲーム」です。こういうちょっとした「問題の解決」を2人で乗り切ったという事実は、チーム感をつくりだします。 以前のレポートでもお話しをしたように、人は目の前にいる相手を無意識のうちに「内集団（味方）」かどうか、自分の仲間かどうかを判断します。それが合意の上のデートだとしても、まだまだ完成されたカップルにはほど遠いあなたと彼女ですから、そういう心の壁は自然にできてしまうものなのです。だからこそ、意図的に盛り上がるイベントをドライブデートの初っ端に繰り出して、2人の間にある空気をやーらかくしてみるのです。

前日のメールやSNSのやり取りで「無事に合流できるように、協力してね！」なんて、さらにチーム感を盛り上げておくのも有効です。
男性はミッションを完遂することに重きを置いてしまう、そんな傾向があります。そのために連絡事項は簡潔になりがちです。文字数を気にするのはビジネスの時だけ。女性とのメールには、そこに感情や共感を紛れ込ませることが重要なアクセントになります。

どんな会話が初ドライブデート向きなのか

車内での話題はどんなものがいいのでしょうか。
そのあたりは、この「ドライブトーク講座」の得意としてきたところです。バックナンバーにある驚きと納得の知の集積を是非ご活用下さい。
その中で、ここで特に触れておきたいのは 「目的地に関すること」を話題にすると無難ですよ、というお話。これはまさにドライブデート向きだといえます。
たとえばラーメンフェスなんかが目的地だとしたら、まずはお目当ての店から回るのか、空いていいるところからなのか、さっぱりから攻めるのか、こってりを押さえておくのか、などのプランニングがいい感じかと思われます。共同作業のイメージをここでも引き続きキープしつつ、という意味でも効果的ですね。
ついでにラーメンの思い出、なんてのもお互いに話してみるのもいいでしょう。ただ、高校1年の冬のあの日については触れなくてもいいかと思われます。つまり、ちゃんと前回のレポートを読んでいない人は置き去りです。

デートプランは万全なのか、どうなのか

そういえば、デートプランってどうしましたか？
（今回、この導入が気に入っているようです）
どこに行くのか、いえ、どこに連れて行ってあげるのか。そんな悩めるあなたにデートプランの基準点をご教授します。
それは、「五感」です。五感に訴えかけるようなプランニングをするのがコツなのです。

たとえば、「味覚」。これは言わずと知れた定番の「美味しいもの食べに行こう」系ですね。そこに「視覚」を足したりするのも効果的。景色のいい場所、一面の菜の花畑、なんていうものいいのではないでしょうか。さらに付け足すなら、花を見に行くのでも、初秋ならキンモクセイのように、「嗅覚」が印象的な花をチョイスしてみたり、食べ物をメインにするにしても、浜焼きなどの香ばしさを強調したり、「新蕎麦の香り」なんていうのもツウっぽくていいですね。

この「五感の重要性」は、目的地だけに適応するのではありません。移動中でも、景色のいい場所に車を停めるなど、要所要所に差し挟んでみることをオススメします。五感が喜ぶようなプランニング、これこそ女性が喜ぶポイントなのです。

応用テクニックですが、目的地に至るルートを完全に決め込んでおかずに複数用意しておくというのもいい手です。当日、「こっちは海沿いの開放感のあるルート、こっちは途中に足湯がある」というようにプレゼンして、女性に決めてもらうのはどうでしょうか。何度もお話ししてきた「チーム感」を、ここでもさらに演出できます。
あなたの周囲にいる無駄に経験値の高いオトナの人たちに聞くとわかるのですが、ひと昔前は目的地までの道をオリエンテーリング気分でゲーム化することができました。しかし、カーナビ様のお導きで、きっとストンと目的地に着いてしまいます。どうせなら、カーナビ様にさらに仕事をさせて、複数プランをセットしておきましょう。

プラン変更は次善の策以上のものを

ところで、前日までせっせと情報収集して決めたデートプランなのですが、絶対死守しなくてもいいことを覚えておいてください。もちろん、あなた発信で「やっぱり、こっちに行こう！」というような、急な変更はご法度です。いきなり車の方向を変えてUターンするのは、刑事ドラマの中だけで、しかも大きなアクションシーンが無い回の定番です。
ただ、何かしらの明確な理由があった場合は、逆に、もう綺麗サッパリ変更しちゃってください。たとえば、日本中の気象予報士が頭を丸めるほどの急な大雨とか。そんなときには、アウトドアのプランをごり押しするわけにはいきませんしね。

そのためにも、天気に左右されない、最初のプランと甲乙付け難いプランを用意しておきます。「よりハッピーな体験ができるもの」ならば、当日ちょっとしたサプライズ感を期待させるという意味も含めて、提案してみる価値はあります。
「今日しかやってない、こんなイベントがあるんだけどさ。キミが楽しめそうかなって思ったんだけど」
というような具合です。

お分かりのように、最後にひと言「最終決定を女性に委ねる」という部分は、くれぐれもポイントとして抑えておいてください。
これは、行き当たりばったりな人というイメージを与えないために、という意味もありますが、女性のもつ進化心理学に根ざした特質が関係しています。
女性というのは、異性との関係において自分の元に「よりよい資源」が集まることを求めています。それが最上の目的と言ってもいいでしょう。多くの女性の言う「尊敬できる人が好き」というようなことは、尊敬できる人は社会的に成功する可能性が高く、そうすれば自分の元によりよい資源が多く集まる（と推測できる）、そう読み替えることができます。
つまり、女性がよりよいと「感じた」プランこそが、名実共に「よいプラン」なのです。

ここで男性諸氏に安心してもらいたいのは、提示するのはあくまでも「期待値」でいい、ということです。多くの資源を投下できるように見せられれば、それで好印象を得られるのです。もちろん、口だけでなく実行力を備えることが前提ですが。尊敬されるために無駄なウンチクを溜め込む必要もありませんし、預金通帳をデートに持参する必要もありません。

決められたプランの中で、ドキドキを得られるような冒険をアテンドできる、安全なプランの中で、さらなる提案ができる。そういうことを心得るだけで、男性としての株は急上昇。あとは、無事に目的地にたどり着き、そこで思い切り楽しむだけです。
その時には、彼女もきっと楽しんでくれているはずです。

成功か失敗かは、男女で微妙に違うから
こんな殺し文句はいかが？

さてさてデートの帰り道。
ドライブデートが成功だったのか、失敗だったのか。これって大きな問題ですよね。失敗とはいえないまでも、イマイチな手応えしか残らなかった、そうなってしまっては元も子もありません。もちろん、そうならないために、ここまでいろいろとお話ししてきたわけですが、実はドライブデートの成功・失敗は、その受け取り方が男女で微妙に違うものなのです。

男性は、まず無事にドライブデートが終わることを至上の命題にするでしょう。それはそれで正解なのです。ただそのことと、ドライブデートの手応えはちょっと違います。無事に目的地までを往復するだけなら、それはただの親切な運転手さんです。

男性は、自尊心が高まる事柄を目的として設定することで、ミッションコンプリート感が高まり、満足度も高まります。そこで、ドライブデートの目的として「自己開示がお互いになされた」ということを目的に設定してみましょう。

心理学では、自己開示を行うことで人の親近効果は高まるとされています。このことは 以前もお話ししましたね。自己開示とは「ここだけの話だけど」と彼女からちょっとした秘密を打ち明けてもらうとか。あなたのとっておきの場所に連れて行って「わあ、すごい！」と感動してもらうこともまた、あなたからの自己開示の成功となります。片方が自己開示をすれば、その返報性によってさらに相手からも自己開示がなされます。これが途切れない会話を生んでくれるのです。

一方、女性というのはレポート1でも触れましたが、関係性の確認をドライブデートの目的としています。ですから、好印象を与えるために頑張るのはもちろん、それを活かすために、最後の殺し文句をご用意しました。シェフのスペシャリテばりに、とっておきの一品です。

「僕はキミと過ごせてとても楽しかった。また誘いたい。キミはどうだ？」

骨子はこれです。
まずは「楽しかった」と、自分の感情を表現します。その大きな理由は、「キミと過ごせた」こと、です。なにやらJポップの歌詞みたいで多少むずがゆいかもしれませんが、あくまでも骨子。
そして「また誘いたい」と明言することで、関係性の持続を確約します。「愛するオンナはお前だけ」と言うと演歌になりますが、要はそんな方向性です。
さらに最後には「キミはどうだ？」と、主導権を渡すこともお忘れなく。

この基本線を確保しつつ、あとは相手の人となりやあなたのキャラに合った言葉でアレンジしてみてください。
ドライブデート初心者のあなたこそ、最後の詰めをきっちりこなしてくださいね。終わり良ければすべて良し。チェックしていた店が臨時休業だった？ お目当ての展望台が工事中だった？ そんなことはどーってことはありません。多少の失敗も、別れ際の好印象がぬぐい去ってくれるはずですから！

いかがでしたか？ ドライブデートの実践、特に待ち合わせや往路の心得などは、あまり耳にしたことの無い、とっておきのアドヴァイスだったと自負しております。
でも、これで終わりではありません。次回のレポート3では、女性視点に立って、助手席で光り輝くいいオンナ的振る舞いを心理学的に紐解いたりしたいと思います。男性諸氏も、勉強に励んでください。

テキスト／ドライブトーク研究室（クラッチ渡辺研究員）
監修／神奈川大学教授・臨床心理士　杉山 崇