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第2話 対処すれば渋滞イライラなんて怖くない!
まずは前回の簡単なおさらい
みなさん、こんにちは。
ドライブの楽しさを後方からおしとやかに支援するこのレポートシリーズ。
今回の『渋滞イライラ克服講座』は、渋滞のイライラをなんとか軽減するべくレポートを発表しております。
前回は、主にイライラが起きてしまう心の仕組みを解説しました。イライラしてしまうのは、目的地に早く到達したい、スイスイ進みたいという目的が邪魔されてしまうから起きる「怒り」の感情がトリガーとなる、とお話ししました。
5億年以上前のご先祖様たちから私たち人類が受け継いだ感情は、一朝一夕にはなんともコントロールできないものだ、とも説明しましたね。だから、渋滞のイライラを克服するために、怒りの感情が生まれずらくするために事前の準備と、イライラしてしまったら、なんとかその焦点をずらしてやり過ごしましょう、ということでした。
ということで今回も心理学的な側面からの裏付けも付記しつつ、「なるほど!」とムチウチにならない程度に強くうなずくようなお話を展開していく所存です。
実際に、どうやったらイライラから感情の焦点をずらすことができるのか。いわば実践的な対処法をお届けいたします。
渋滞だからできること、渋滞が楽しみになることを
前回、渋滞イライラへの対処法として、普段から「渋滞は起きるものだ」という意識を持つことが大事だとお伝えしました。そうすることで、スイスイと目的地に到着するという目的意識自体を弱くして、目的阻害による怒りの感情を抑え、イライラを起きにくくすることができるという仕組みでした。また、対処の方法として、感情の焦点ずらしましょう、ということもご紹介しました。焦点をずらすために、今現在ではなく「次のことに気持ちを向かわせる」ために、これからの予定などを立てて、感情の焦点をずらすという考え方でした。
今回のひとつめの対処法は、事前に準備をしておき、さらには感情の焦点をずらすために、より効果的な音楽を使います。そうすることで、渋滞の「価値観自体を好ましいもの」に少し変えてしまおう、というご提案です。
ということでご提案したいのは、音楽です。ミュージック。ドイツ語ならムズィーク、イタリア語ならムジカです。
こんにちは! 今回も横から少しだけしゃしゃり出て気になることとかを質問したいと思っています、イラ山です。前回のお話、納得したのですが、やっぱり気持ちのフォーカスをずらすのは難しかったです。で、今回のさらなる対処法を期待していたのですけど、音楽ってちょっとありきたりではありませんか? あ、生意気言ってすみません……。
いえいえ、イラ山さんが心配するのも当然。音楽を聴くだけで気持ちがスッとするなら、誰も渋滞イライラに苦労させられませんよね。
ただし、音楽には「感情誘導効果」というものがあります。その音楽に自分の好ましい感情が紐付けられていれば、音楽がきっかけとなってその感情が沸き起こりやすいのです。
そしてさらに音楽には「気分一致効果」というものもあります。これは気分と一致した方向に連想や想起が展開するというものです。音楽を聴いていて、いつのまにか思い出が次から次へと登場してくる、なんていう経験は誰にでもあるかと思います。
つまり、音楽は気分を変える第一歩として、とても有用なのです。
さらにここでは、聴く音楽にちょっと工夫を施したいと思います。
みなさんには、好きな音楽だけど最近は聞いていないなあというジャンルはありませんか? 中高年の皆さんなら、若い頃聞いていたジャズだったり、少しマイナーなプログレだったり。好きだったけど、いつのまにか聴かなくなってしまったジャンルの音楽、誰にでもあるはずです。
そういう音楽を「改めて聴く」ための時間を、渋滞の時にする、と決めるのです。
どういうことか、もう少し詳しくお話ししましょう。
例えば、若い頃ちょっと背伸びして聞いていたモダンジャズ。聴いている自分がカッコイイと思い込んで、いろいろと手を出してみたものの、コレクションする経済力もなくてなんとなく中途半端になっちゃっていた。……そんなこと、ありますよね。読んでいて胸が痛くなったら、それは思い当たる節があるか、体調が悪いかです。定期的な検診、大事ですよ。
そんなモダンジャズを、「まとめて、年代順に聴く時間」として、渋滞を利用します。
渋滞にハマったら、用意していた音楽を聴くというルールにするのです。もちろん渋滞が解消されたら、音楽は止めます。普段は、どんなに時間が空いていてもこのセットリストは聴いてはいけません。
あくまでも、渋滞の時に聴く音楽、としてとっておくのです。
うまくいけば、渋滞にハマったときに、少しだけ「よし、あのセットリストが聞ける!」となるかもしれません。音楽を聴いている間は、希望に溢れた熱い気持ちを想起しているかもしれません。ほろ苦い失恋の思い出とともに、純粋だった頃の気持ちを新たにしているかもしれません。
そして渋滞が解消されたときには、少しだけ「ああ、もう聴けないのか」と残念に感じるかもしれません。
これまで、渋滞にハマってしまうことには、なんの楽しみもありませんでした。でも、心にちょっとだけ前向きの感情、好ましい感情が湧くかもしれないのです。これは、実はとても大きな変化だといえます。
渋滞の時に「することがある」という習慣は、ただただ我慢して嫌な時間をやり過ごすという生活スタイルよりも、よほど心が軽くなります。
あー、少し納得です。つまり、音楽で勝手に癒されましょう、ということじゃないんですね。渋滞の時に聴く音楽を「用意する」ということで、前回にも教えていただいた「渋滞がない前提で出かけない」ということも、つながっていて、なんなら渋滞に対する印象も少し変わるかもしれませんね。
さすがイラ山さん。イライラしていないときは思慮深い方です。その通り、そういうメリットもあるのです。
さらに、自分を取り巻く「物語」を変えてしまう、というのも効果的です。
今現在の自分は「渋滞にハマって動けずにいるワタシ」ですが、それを違う物語の中にいる自分に置き換えてしまうということも可能です。
同乗者がいるのなら、今車が止まってしまっているこの道、この場所の歴史的なエピソードを検索してもらって読み上げてもらう、なんていうのも楽しいですね。スムースに流れていれば、ただの通り道ですが、調べてみたら200年前にムネアツな人間ドラマが繰り広げられた場所かもしれません。
あるいは、もう一度読み返そうと思っていてなかなか時間が取れなくて断念していた古典小説とかのオーディオブックでもいいでしょう。いまさら恥ずかしくて読んだことがないと言えなかった青春小説とか、日本の歴史をざっくりと聴かせてくれるコンテンツ、とかでもいいんです。
自分を今とは違う物語の中に置くことで、気持ちを少しずらして、イライラを軽減することができるのです。
動かない車の中だから何もできない、のではなく、少し準備をしておけばやれることはまだまだあります。そして、そういう時間こそが、渋滞イライラに効果的なのです。
イライラ軽減の功労者になる
このあたりで一緒に乗っている人にも、重要な役周りでご登場願いましょう。
同乗者の立場から、ドライバーが抱える渋滞イライラを、どうにかして減らせないかという話題です。というか、ナビシートからの援護で、ドライバーの渋滞イライラは大きく軽減するはずなのです。
まず心の仕組みとして覚えておいていただきたいのが、「苦痛の共感」がとても大事だということです。自分が感じている苦痛は、誰かに共感してもらうことで緩和します。「誰も知らない私だけの苦痛」はとても大きなものですが、それが「隣にいる人がわかってくれている苦痛」になったとたん、びっくりするほど弱まるのです。
脳科学で実証されているところでは、苦痛は「ウマの脳」といわれる大脳辺縁系の興奮で強まるります。一方で、大脳辺縁系は仲間がいる安心感で静まる傾向にあることもわかっています。つまり、自分のことをわかってくれる仲間、この場合は助手席の人の言動がとても大事なのです。仲間からの肯定的な言動は、脳からの快楽物質分泌を多く促すということも知られています。これによって、苦痛はより緩和されます。
この心の仕組みを、渋滞イライラに応用するのが、「助手席にいる人の共感」です。
……と申し上げると、多くの男性はちょっと眉をひそめるかもしれません。そう、多くの男性は、この「共感」が下手くそなのです。
男性の思考は、おおむね「問題解決型」です。何か目の前にトラブルが起きたとき、どうすれば解決できるのか、と考えます。「ねえ、聞いてほしいんだけど」と女性から話を聞かされて、アドバイスなども交えながら真面目に答えたのに「そういうことじゃないのよ!わかってないわね!」とプンスカされたことのある男性は、たくさんいるはずです。
女性から「聞いてほしい」と言われたら、「聞いてあげるだけ」がほぼ正解です。もっと掘り下げるなら、聞いてほしいという気持ちが湧くほど、その出来事が心の重荷になっている、ということです。つまり、感情を共有してもらうことで心が軽くなることがわかっているから、女性はそう言っているのです。
「そういうときこそ冷静にならないとさ」なんて余計なことを言うから、「わかってないのね!」なのです。
おっと。ちょっと話がそれました。でも、つまりはそういうことです。
渋滞イライラで沸き起こった感情、やり場のないちょっとした怒りを共有できるのは、同じ車内にいるナビシートの人だけです。
ここでコツとなる共感の仕方をご伝授いたしましょう。
怒りがトリガーとなってイライラしている、このこと自体、実はドライバーの負担になっています。イライラしている状態がとても正しい状態ではないということは、本人も分かっているのです。
だから、ここでは「イライラしている気分」を悪者にして、ドライバーから切り離してあげましょう。この気持ち自体がよくないものだよね、という部分にのみ特化して共感するのです。
つまり、言うべきセリフは「渋滞になっちゃうと、イライラしちゃうから、イヤだよね」です。
この湧き上がったイライラという心の動きが、あなたにも私にも、イヤなものだよね、と価値観を共有するのです。
イライラを共有するというのは、一緒にイライラするのではなく、そのイヤな気持ちとそれが湧き上がるこの状況についての価値観を共有するのです。
うわ、わかりますーわかりますー。旦那さんが少しヲタクだから、そういう女性の心にうといっていうのもそうですし、私ももちろん助手席に座ることありますから。ドライバーがイライラしてると辛いですものね。イライラしないでよ、とも言えませんから。
そうなんですねえ。イライラしている気持ちをまるごと「イヤよねえ、まったく」って、共感してあげればいいんですね。でも、女性はそういうの得意かもしれませんね。
イラ山さん、そうなんです。女性は共感が得意なので、ぜひイライラ緩和の助手として活躍していただければと思います。
割り込みされても、隣の車線のほうが流れていても……
私の方から質問したいのですが。渋滞イライラもそうなんですけど、割り込まれるとさらにイライラしますよね。無理な割り込みは危ないし、「下手くそだなあ」と感じちゃいます。もう、そう感じることがちょっと損している気がするんですけど、割り込みをされてもイライラしない方法とか、あるのでしょうか?
かなり言葉を選んでおっしゃっていますが、イラ山さんの気持ちはとてもよくわかります。きっと車内では「なにやってんだ、この下手くそ! 先読みできないから焦るんだよ、すっとこどっこい!」くらいのことはおっしゃっているのでしょう。いえいえ、責めてはいません。わかるだけです。
割り込みをされてイライラしてしまう気持ちは、インターナル・コントロール(内的統制感)とアウターナル・コントロール(外的統制感)という言葉で解説ができます。
例えば電車に乗っていて、あなたが座っている席に、網棚から荷物が落ちてきたとしましょう。それが自分の荷物だったら、腹は立ちませんよね。おっと、失敗失敗、くらいのものです。
ところが、他の人の荷物だと、途端にイラっとします。
この差は、コントロールしているのが自分か否か、という部分が大きく関係しています。
荷物を置いたのが自分の場合、荷物落下という現象をコントロールしたのは自分です。つまり、インターナル・コントロールされている状況、です。一方で、他の人の荷物が落ちてくるのは、自分の意思の及ばない外側のコントロールによって引き起こされた現象、アウターナル・コントロールの現象です。
人は、自分に裁量権のあるインターナル・コントロールで起きた現象であれば、多少のデメリットがあっても、寛容な態度が取れるものなのです。「おっと、失敗失敗」くらいのものです。 しかし、アウターナル・コントロールだと、裁量権が自分以外の誰かにあるわけですから、簡単に対立することができ、怒りを向ける具体的な「敵」が生まれてしまいます。
ということで、割り込み、です。
自分は何もしていない状態で、他の車の割り込みという現象が起きたら、これはアウターナル・コントロールによって起きた現象だと認識します。そう認識してしまっては、イライラしたり怒ったりするのは当然のこととなります。
であれば、他車の割り込みも、私が裁量しているインターナル・コントロールで起きた現象にしてあげるのが、正解なのです。
割り込まれそうになったときに、すぐに気持ちを切り替えるのです。割り込まれたではなく、割り込ませてあげた、そう考えましょう。割り込みのできる車間距離を、あなたが用意してあげていたわけですからね。
そして「お、入りたいのね。いいわよいいわよ、くるしゅうない、入れてしんぜよう」くらいの気持ちで、なんならどーぞどーぞとあの三人組ばりにボディランゲージもつけて譲ってあげましょう。
無理に「意地でも譲るもんか!」と車間距離を詰めるようなことは、危ない上にアウターナル・コントロールに陥っています。相手の動きがあなたの動きを誘発したわけですから、アウターナルなんです。安全運転のためにも、「入れてしんぜよう」を実践してみてください。
なるほどー。「割り込まれた」って考えると、割り込まれた事実にプラスして気持ちの上でも相手に優位を譲っちゃうんですね。ダブルで損しちゃう、ってことですか。
「くるしゅうない」を私も使ってみますね。
あ、あと、いつも私が選ばなかった隣車線のほうがスイスイ流れているような気がするんですけど、これもやっぱり心の仕組みで説明できるんでしょうか?
なかなかいろいろと感じてしまうのですね、イラ山さん。
これもまた、いわば心の動きが感じさせる起こりやすい事実誤認です。何が事実誤認かといえば、隣の車線だけが流れていること、です。実際は、自分の選んだ車線がスイスイと流れている瞬間もあるはずなのです。
でも、隣の車線の方だけが流れているように感じるのはなぜなのでしょう。
人間は生き残るために、群れの中で自分がどういう位置にいるのかを常に確認するように進化してきました。そこを認識しないと、何に頑張ったらいいのかがわからずに、群れの中で有利になれないからです。これは優越欲求、賞賛獲得欲求ともいわれ、高位の欲求とされています。だから、人間がこういう「社会的な比較」を重要視するのは、仕方がないことです。そういう心のつくりに進化しているのです。
だから、隣の車線のほうがちょっとでも流れていくと、危機感を感じてしまいます。ちょっと嫉妬の感情が喚起されてしまいます。そう、簡単に言えば「隣の車線の方が流れている、いいなあ」という嫉妬の感情なんです。
でも嫉妬という感情が起きる状態の多くは、ほとんどが事実誤認です。もともと比較するべきではない状態なのに、公平ではないと事実誤認をしてしまっているから、嫉妬の感情が湧くのです。
きっと、どの車線を選んでも、そんなに到着時間は変わりません。高速道路なら、なおさらです。
ということで、車線を選んだ時点であなたは主導権を得ています。「我が選択に一片の悔いなし!」と、心で叫んでみてください。隣の車線のことは「比べる対象ではない」と認識して、これまでにご紹介した「渋滞イライラ対処法」を実践していただくほうが、精神衛生上健全だといえます。
まさかジェラシーの話が出てくるとは思いませんでした。そんなに嫉妬深いキャラじゃないと思っていたのですが、進化の結果なら受け入れるしかないですよね。車線の選択も、受け入れます。だって私、かなりいい女ですから!
イラ山さんが自己暗示、おっと失礼、きちんと納得してくださってよかったです。
ということで、第2回はこのあたりでお開きとさせていただきます。
次回は、高速道路での渋滞の強い味方、日産の「プロパイロット」に関して、実際の利用者のみなさんからの「あるある」をご紹介します。
もしかしたら、ここまでのお話がかすんでしまうくらい、渋滞イライラは実は軽減されているのかもしれません。
しばし、次回までお別れです。
テキスト/ドライブトーク研究室(クラッチ渡辺研究員)
監修/神奈川大学教授・臨床心理士 杉山 崇
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