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卒業講座 第3話
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第3話実践してわかった!ペーパードライバー卒業のコツ

申し込みはご一緒に!

みなさん、こんにちは。これまで運転に対する恐怖感を、少しずつ少しずつ軽くするための努力をしてきました本講座。
よく言われる「運転は慣れれば大丈夫」ということの心理学的な正しさをご紹介したり、運転中に飛び込んでくる情報量の多さをコントロールできれば、実際に恐怖感が軽減される、ということなどをご紹介してきました。
さて今回は、佐藤夫妻を大々的にフィーチャーしましての、ペーパードライバー卒業の実践編です。

優しく、相手のことを思いやりながら励ましてきた、レギュラードライバーである夫のタケシさん。その応援に応え、なおかつこの講座でお話ししたことを心に刻んだ妻のハルコさん。
満を持して、 ペーパードライバー教習を受けることとあいなりました。

飛び越えるべきハードル、まずは低めなものを選ぶべきだという判断から、自動車教習所のペーパードライバー教習を受けることに。
ハルコさんは実家の近くで免許を取得したので、いま住んでいる自宅近くの教習所は初めての場所。ちょっと不安もありました。

申し込みだけでも、一緒に行こうか

せっかくのお休みの日に、もったいないんじゃない?

いやいや、散歩がてら行ってみようよ

これ、タケシさんのファインプレーです。
教習を受けると決めたのは、確かに自分の判断ですが、だからといって100%楽しそうなことではないですよね。そもそもちょっと怖いんですから。
なので、 レギュラードライバーの人は一緒に申し込みに行くという特別な体験感を増やしてあげるのがグッドです。
これは心理学でいう「リフレーミング」というテクニックです。「教習所に行く」というハルコさんにとってそれほど魅力的ではない事柄(フレーム)を「夫婦のお散歩」という魅力的なフレームに置き換えたのです。

また、教習所の進化はなかなかに日進月歩です。予約のシステムやサービスなど、他者との差別化を図るためにどしどしと変わっています。
なので、ペーパードライバーさんが戸惑っても「このあたりじゃ、これが普通だよ」なんて上から目線でコメントせずに、一緒に感心したり喜んだりしてあげてください。
そう、心理学的には感情を共有することで親近感が増すとされています。それが夫妻の間柄だとしても、「運転に関する事柄」は別物。改めてきちんと親しくなるつもりで。ね。

あ、あと、途中で尻込みしそうになるシーンも多いかと思います。
そんなときは優しく「大丈夫だよ」と励ましてあげてください。
結局「運転してみれば、意外とできた」となることが多いですし、そもそもペーパードライバーは一度免許を取得できているのですから、ゼロから免許を取ろうとしている他の教習生よりも間違いなく上手いんです。

そこのところを、根気強く教えてあげるのも、レギュラードライバーのお仕事です。

そしてこれも大事なことですが、教習の申し込みを終えたら、レギュラードライバーさんは一緒に喜んであげてくださいね。
これまでの自分を変える一歩ですから、ペーパードライバーにとっては、申し込みですら大きな一歩です。そこのところ、きちんと汲み取ってあげてください。

座学とクリープは、意外と効く!

ハルコさんが申し込んだ教習所でのペーパードライバー教習は、座学も付いていました。
座学で教わることは、基本「復習」だといえます。
覚えてないことも多いですが、聞いてみれば思い出すこともあります。意外に覚えていることがわかると、それも自信につながるのです。
そして、手元に教科書があることでちょっと気になったことを自分で調べられる、というのも安心感につながります。これってどうだったっけ、と軽い気持ちでページをめくる。あ、そうだった、と納得する。
そういう小さな行為の一つひとつが、実際に運転することへのハードルを下げてくれます。そう、座学は意外と効くのです。

ペーパードライバー教習の内容は、教習所によってさまざまです。
ハルコさんが受講したところは、自分で何時間受講するかを決めるスタイルのところでした。実車教習は、まずは教習所内で1コマ、路上に出て2コマを選びました。もちろん、これもタケシさんと相談しながら、でした。

教習最初の日、帰宅したタケシさんはハルコさんの様子が明るかったので安心したようです。

教習、お疲れさまだったね

うん、でも思ったよりも怖くなかったかな

それはよかった! で、最初はどんなことやったの?

ここでも出ましたタケシさんのファインプレー。
まずは「お疲れさま」のひと言、これ大事です。誰のためとか、辛くても決めたことだからとか、そーゆーのはいりません。もちろん結果の良し悪しを開口一番問い詰めるのなんて言語道断。そんなことをするのは、出来の悪い中間管理職だけです。
まずはねぎらいの言葉が必要なのです。
これはコーチングテクニックの一つで「アクセプト(受容)」と呼ばれるものです。自信満々な人を除けば「自分ができたこと」よりも「自分自身」の努力に注目してもらったほうが、その相手との距離が縮まりますし、ほっとします。ねぎらうことでレギュラードライバーのタケシさんとペーパードライバーのハルコさんの距離がぐっと縮まりました。ペーパードライバー脱出に近づいたわけです。

また、 時間があれば「どんなことやったの?」と聞くのも大事。落ち着いた状態で思い出すことで、記憶は定着するということは、講座の第2回でもお話ししましたよね。
記憶が定着すれば、運転中に飛び込んでくる多くの情報をさばけ、恐怖感の軽減にもつながります。この会話が、明日にもつながるのです(うまい!)。

ハルコさんが受講した教習では、まず「とりあえず、なんでも試してくれていいですから」と言われたそうです。これ、とてもありがたいことですよね。
お役立ちコラムにも書いてありますが、シートに座って心ゆくまでいろいろ試したり確認したりしてから、動き始めていいんです。腕の位置から楽な姿勢から、いくら質問してもいいでしょう。どんな「当たり前っぽい」ことでも、聞いて聞いて聞きまくります。とにかく隣にいる教官を使い倒してみましょう。
エンジンをかける前にも、このように恐怖感を軽減させるアクションを取ることは可能なのです。

また、ハルコさんはクリープ走行(アクセルを踏まずに、アイドリングしているパワーだけで車がゆっくりと進む)をやってみて、自信を取り戻した様子。
自分の能力を超えたことができるのがドライブの醍醐味ではありますが、そのオーバースペックに対して恐怖を感じるのも、ペーパードライバーならでは。
なので、 自分でコントロールできるスピードで、そして後続車に迷惑をかけずに済む場所で、ゆっくりとハンドルの感覚や曲がり具合などを確認できたことは大収穫だったそうです。
意外に出来た、こういう自信が大事ですから。

同じペーパードライバー教習を受けている女性が多かったことも、ハルコさんの心を楽にしてくれました。
この教習所では、ペーパードライバー教習に来ていた人の7割ほどが女性。その多くは運転する必要性が生まれて、そして運転に対して前向きな人だったのだそう。

こういう話を夫妻でゆっくりすることも、大事なんです。

さらに個人レッスンがいい!

教習所での数時間がいい影響をハルコさんに与えたようです。
もう少し運転に慣れたい、とハルコさんが言い出したチャンスを、タケシさんはもちろん見逃すはずもなく、 個人レッスン形式のペーパードライバー教習に再度トライすることに。
2人でよさそうなところを探して、日取りも決めました。

本気でハルコが運転しやすいのに買い換えるつもりだから、うちの車は使わずに、取り回しの簡単な車をレンタルしようよ。そのほうがいいと思うよ

なんて、妻の身になって発言するタケシさんを見て、ハルコさんが軽く惚れ直したりなんてワンシーンはさておき。
ペーパードライバー教習当日となりました。
この日、休みを取ったタケシさんも同乗して教習開始。タケシさんはバックシートで盛んにメモを取り、休憩中には先生に話を聞いたりと、地味ですが大活躍。相手ディフェンダーを引きつけてパスコースを演出するいぶし銀のトップ下選手のように振舞っておりました。
無事、数時間の教習を終え、佐藤夫妻はこの日のことを振り返りながら食事を摂りました。

一番最初に、車の周りをぐるっと回ったり、あなたに立ってもらってサイドミラーの見える範囲を確認したり、したじゃない? あれでずいぶん緊張が取れたのよ

そうみたいだねえ。さすが先生、そういうステップは忘れないね。あと、目的地が結構離れたところだったから大丈夫かなと思ったんだけど、終わってみればいいチョイスだったね

うん。出発地点も道路は広かったし、行くまでの道もあんまり怖い思いはしなかったわ

この日、先生が選んだのは、平日の午前中に交通量の少ないオフィス街から出発して、小一時間離れた観光地を目指す、というコース。
何度も利用しているルートということで、先生の指示も滑らかです。
ちなみに、先生はブレーキアシストをするための、つまり横からブレーキを手で押せるような、特製のステッキ持参でした。こういうガジェットもまた、プロに任せたお陰でしょうか。

先生、優しかったよね。指示もさ、ずいぶんと早くからしてくれてたし

この先、ふたつ目の信号で止まるだろうから、慌ててアクセル踏まなくてもいいですよ、とか。あと、路駐している車が先にいるから、きっとこの車は車線変更してきますよ、とか

他の車の挙動まで予測してアドバイスしてくれると安心だよね。自分で運転しているときは、そういうのを頭で考えるだけだから、なかなか言葉に出すのは難しいんだ

さすがよね。あ、あと、こうしなくちゃダメとかこれはしちゃダメとか、あんまり言わなかった気がする

うん。まず、『この先、車線変更しましょう。右にウインカー出したままで、様子みちゃいましょうか』とか。なんていうか、効率を考えて正解だけ伝えないから、慌てなくて済んだんじゃないの?

そうそう!

手遅れにならない範囲であれば、ある程度の戸惑いも許容してくれた先生の指導は、ハルコさんの気持ちを軽くしたようです。
これは、先程ご紹介した「アクセプト」と同じことですね。
タケシさんは、アドバイスの仕方が勉強になったようなので、きっと受容の心を持ちながら、ハルコさんに指示ができるようになるでしょう。そうすれば、ハルコさんの苦手意識も減っていくはずです。

レギュラードライバーもまた勉強になるはず

さて。個人教習の先生の指導法に大いに感銘を受けたタケシさんですが、その秘訣は今後の レギュラードライバーとしてのあり方に、大いに活かしていただきたいものです。
中でも、特に有意義だと思われるいくつかを、ご紹介しましょう。

まずは、レギュラードライバーの指導する時の心得、です。
レギュラードライバーが助手席に座る最終目的は、ペーパードライバーに運転は怖くない、特別なことじゃないんだよと、納得させることです。
とにかく恐怖を感じさせないようにしつつ、そうなりそうな場面を極力排除するように、アドバイスをします。

例えば、「あの車、ハルコよりも運転下手だから先に行かせちゃおうか」という具合です。
対人、対車、対助手席。運転者が対峙する相手は複数。そのどれかから恐怖を与えられたら、「もうあんな思いはしたくない!」と、運転に対して懲りてしまいます。そうならないように、助手席にいるレギュラードライバーは、先を読んでアドバイスをします。

アクシデントが起きた時、起きそうな時、レギュラードライバーは思わず助手席から強い口調で注意してしまいがちですよね。でも、それは絶対にしてはいけません。

間違っても「ほら、危ないから減速して!」などという、結果さえ良ければどんな言い方をしてもいいとは考えて発言しないように。 避けるにしても、減速させるにしても、早め早めに。なおかつ、褒めつつ、具体的に指示をするのです。

具体的な指示をするにもポイントがあります。
それは、数字を組み込むことです。
「前の車まで30メートルくらいだから大丈夫」とか、「2つ先の信号を右折するから次の信号を越えてから車線変更しよう」とか。これがアドバイスの正しいカタチです。

「ちょっと行ったら左折だから、少ししたら車線変更ね」とかは、もう、アドバイスとはいえないんです。反省してください。

早めに、まるで予知能力者のようにアドバイスすることと同時に、 その後のフォローも重要です。
例えば、交差点を曲がる前に、曲がった後の車線を指示したとしましょう。そうしたら、「この後、しばらく直進だから真ん中の車線を選んだんだよ」と、指示の解説をしてあげるのです。
「さっき減速してもらったのは、後ろからトラックが追い抜きたそうにしてたからなんだ」とか。
運転していて、何かを判断しなくてはならないまさにその最中は、入ってくる情報は過多です。ペーパードライバーが判断するタイミングで指示をして、なおかつそれを解説フォローによって記憶の定着を図る。
こうすれば、ペーパードライバーは恐怖感を軽減させ、早く運転に慣れていくことでしょう。

また、毎日の練習のちょっとしたコツについてもお伝えしましょう。
練習をするなら、よく行く、あるいは行こうと思っている場所まで、何度も往復してみること、がポイントです。
同じ道を何度走っても、運転技術は上達しないような気がしますが、まずは上達することよりも慣れることが先決なのです。

慣れることで、例えば往路では見えなかった2つ先の信号を、復路では確認できるようになります。視野が広くなれば、それだけ余裕を持って判断できます。それが積み重なることで、他の車の挙動にも慣れますし、自分がどのタイミングで判断すればいいのかという目に見えないタイミングもわかってきます。
怖くなるポイントがどんどん減っていくのです。

最後に、もう一度レギュラードライバーの心得を。
ペーパードライバーにとって、わからないということは最大の恐怖です。だからこそ、運転の経験が豊富なレギュラードライバーは、何を聞かれても答えてあげる(それが初歩中の初歩でも!)が大事ですし、気がつかないような「これから起きそうなこと」も教えてあげることで、ペーパードライバーさんは運転に慣れていきます。

そして、レギュラードライバーさんも、プロの教官ではないので、とっさの時に横からハンドルを切ってあげたり、ブレーキを踏んであげたりはできないものです。
そういう自分の非力も自覚しつつ、 一緒に上達するんだ、という気持ちでいてください。

ということで、今回の講座はこれで終了です。
このあと、佐藤夫妻が楽しいドライブを送れることになるのかどうか。それはまた別のお話ではありますが、その可能性は高いんじゃないかな、と考えます。
できることを、できるスピードで。そうすれば、運転は決して怖いものではない、楽しいものだとわかってくるのです。
佐藤夫妻に幸あれ!

次回は、読者のみなさんから寄せられた2000通に及ぶ「ペーパードライバーあるある」から、胸につまされるもの、思わず笑ってしまうものなど、是非共有したい傑作をご紹介します。
お楽しみに!

テキスト/ドライブトーク研究室(クラッチ渡辺研究員)
監修/神奈川大学教授・臨床心理士 杉山 崇
協力/ ペーパードライバースクール ウインクリエート