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第2話"あるある"で分かった!ペーパードライバーの心理とは

実は運転「だけ」が怖いのかもしれませんよ

みなさん、こんにちは。ペーパードライバーからの卒業を目指すこの講座、第2回はお待たせしました、ペーパードライバーさんご本人に向けてのお話となります。 ペーパードライバーが直面する最大の敵、「運転が怖い!」についてお話ししてまいりましょう。
今回は、独自調査によりセレクトした「ペーパードライバーあるある」をご紹介しつつ、恐怖感の仕組みやら何やらを紐解いていく所存ですが、まずはその前に一つ、ご質問をば。
運転に対して恐怖を感じ、それが主な原因でペーパードライバーになってしまっているという方、あなたは運転以外のことにも、すぐ恐怖を感じるタイプですか?
お刺身を食べる前には必ずお腹を壊すことを想像して冷や汗が出るとか、お化け屋敷に3回トライしたけど3回とも救急搬送されたとか。
例えはちょっと極端になりましたが、ペーパードライバーであるならば、こうした何事にも恐怖するというタイプではないはずです。
なぜなら、ペーパードライバーは、すでに一度、ちゃんと免許を取得できているから、です。
怖がりの人にとって、運転免許取得はそこそこ恐怖のハードルが高いことのはず。今まで体感したことのない大きな機械を、自分が走る以上のスピードでコントロールするわけですから、何でも怖がる怖がりさんでは、そもそも免許は取れていないと思われます。
とすれば、 ペーパードライバーは「運転」という特別な行為にだけ、恐怖している、ということなのかもしれません。
では、なぜ、運転にだけ怖がってしまうのか。ここから先は「あるある」で紐解いていきましょう。

今回行った独自調査による「ペーパードライバーあるある」で、いの一番にこんな声を拾いました。
「運転したら、加害者として事故を起こしちゃうんじゃないかと不安で……」
この気持ち、わかります。
運転しなければ回避できたはずの事故ですから、この恐怖感が最大のフックとなってペーパードライバー化しちゃう仕組みも、理解できます。

ただ、こういう恐怖感にとらわれている人は、ちょっと思い出してほしいのです。
日常生活の中でも、同じくらい「加害者候補」となっているんだ、ということを。

たとえば、駅の階段。あなたが最上段にいるとき、何かのはずみで目の前の人を押してしまったら、命に関わる事故の加害者になりますよね。青信号待ちの横断歩道でもそうです。でも、多くの人はそういうときにあまり恐怖を感じません。つまずいても大丈夫なように少し距離をとったり、緊張せずに立ち振る舞うことができています。
これって、つまり「慣れている」からです。

日常生活で苦もなく危険を回避することができているから、加害者になる恐怖感を覚えないでいられるのです。
だとすれば、運転に対する恐怖感は、 単に、運転に慣れていないから起きているということ。裏を返せば、慣れさえすれば薄まっていく、といえるのです。「慣れれば怖くなくなる」と、レギュラードライバーたちが言うセリフは、あながち間違っていないということですね。

緊張してるとシングルタスク

運転へのそもそもの恐怖感は不慣れからきている、ということがわかったところで、付随する諸々の恐怖感にも、ちょっと踏み込んでいきたいと思います。恐怖感が実際に薄まっていく体験は、次回の第3回でお話ししようと思っていますので、ここでは、「そんなもんかなあ?」と、うっすらと疑わしいくらいの感じで読み進めて頂ければ大丈夫です。

次の「あるある」は、我らが佐藤さん夫妻の会話でご紹介します。

運転の、何が一番怖いって感じるの?

うーん、いろいろあるけど……。やっぱり、一番怖いのは大通りかなあ。
ほら、私が免許取ったのって地元ののんびりしたところだから。このあたりは、交通量も多くて、怖いかなあ

なるほどねえ

思い当たるペーパードライバーさん、多いのではありませんか。この恐怖感の根っこには何があるのでしょうか。
のんびりした田舎道と、都市圏の大通り、どこが違うのかを考えれば、答えに近づきます。
そう、 最大の相違点は「情報量」です。

都市圏の大通りでは、常に外部から情報が入ってきます。そして、それに瞬時に対応しなくてはならないのです。
頻繁に登場する信号機の変化はどうか、自分はどこで曲がるのか、曲がるときどのあたりから車線変更するべきか、隣の車線の車は抜かしたいと思っているのか、「あっここって一通!?」などなどなどなど。
そこにカーナビからの指示が聞こえ、なんならナビシートからアドバイス的なひと言も飛んでくる。
もう、いっぱいいっぱいです。

運転に慣れていない状態は、限りなく緊張状態に近いといえます。そして緊張状態では、人の脳はシングルタスクでしか対処しない、とされているのです。あれもこれも、同時には対処できないようにできているのです。
その上、人は本能的に「こういう状態では、ひとつのことしかできないよー!」ということもわかっています。わかっているから、 次から次へと情報が飛び込んでくる状況自体に「恐怖感」を覚えるのです。このままじゃ危ない、と感じるのです。

恐怖感を減らすなら、地道だけど確実な手がある!

入ってくる情報の「絶対量」を減らすことは、引っ越しでもしない限りなかなかに難しいかと思います。意志の力で交通量を減らすためには、まずはエスパーになる必要がありますし。
とすれば、 次なる手段は「覚える」ということです。

右折、左折が苦手な人の中には、こんな人がいます。
「何回、ハンドルを回したかとか、覚えてられないんです。だから、曲がった後でハンドルを戻そうとして慌てちゃう」
うんうん、わかります。
でも、逆をいえば、覚えることができれば良いわけですよね。
無意識に覚えていられれば、ひとつ飛び込んでくる情報が減るわけです。
曲がる場所にしても、車線変更をする場所にしても、覚えていられれば、情報的に身軽になれます。

しかし。
そんなにいっぱい覚えられません。
特に、運転に苦手意識を持っている人は、普段の物覚えの良し悪しとは別次元で、覚えられないのです。

ハンドルを回し終えたあと、「今、何回ハンドル回した?」と聞かれれば、普通はすぐ答えられるようなものですが、運転中だと咄嗟には思い出せないですよね。
それは、なぜかといえば、やっぱり緊張状態にあるからです。

先程のシングルタスク化にも関わりますが、緊張状態やプレッシャーにさらされているとき、人はコルチゾールという物質を身体中で分泌します。これは体に「さあ、なかなかのピンチだ!この状態を切り抜けるために、努力しなくちゃ!」と、臨戦態勢をとらせる物質です。別名ストレスホルモンともいわれる、いわば警報音のようなもの。そしてこれが厄介なことに、短期記憶に関連する海馬の機能を低下させてしまうのです。
つまり単純にいえば、プレッシャーを感じていると、いろいろと覚えにくい、ということ。
慣れてないから運転が怖い→情報が入ってきてさらに緊張状態が高まる→覚えられない→緊張が収まらない→やっぱり怖い→慣れようがない!
これはもう、悪循環ですよね。この魔のサイクルを抜け出すには、どうすれば良いのでしょう。

緊張するな、といわれても、しちゃうもんはしちゃいます。
それよりも、記憶の定着の方で少し努力をしてみてはどうでしょうか。
まずは、車に乗るとき、休憩を頻繁にとりましょう。
そして、気持ちを落ち着かせてから「さっき終わったことを、意図的に思い出す」ようにします。
さっきなんとなくクリアできた車線変更、曲がる前どのくらいのところで車線を変えたのか。曲がり終わったあとの車線は、どこに入れば良かったのか。
そういうことを落ち着いた状態で思い出すと、記憶が定着しやすくなるのです。

そうやって、 少しずつ運転に関する記憶の蓄積がなされれば、処理しなくちゃいけない事柄の情報量は、どんどん減っていきます。

わかってしまえば、気は楽になる!

こんな声もありました。
「運転席に座ると、急に視界が狭くなるような気がする」
これまた、わかります!
それに、フロントガラスのあの横の柱!運転席に座ると、やけに目に付きますよね!あ、ピラーっていうらしいのですが。

このピラーが邪魔に感じることにも理由があるのです。
人は、緊張したり集中した状態では、シングルタスクになってしまう、とお話ししました。そうなる目的は、目の前のリスクに注力して、危機を乗り越えるためです。
そう、 緊急時は「目の前にあるものの方が重要」という本能的な判断が下されるのです。
緊張したり恐怖を感じたり、もっと平たくいえばテンパッたとき、目の前のことしか見えなくなるのは、当然なのです。

もうおわかりですね。
運転席で恐怖を感じてしまうと、目の前のことが気になる、つまりピラーがやけに邪魔に感じる、ということです。
ということはこれもまた、慣れれば気にならなくなる、ということです。先ほどの、記憶の蓄積と同じなのです。

最後に、オマケ的な「日本人ならではのあるある」を。

「どうしても運転したくないわけじゃないけど、運転できる人としてカウントされたくないんです……」
ああ、これもわかりますね。
可能なら避けたいんですよね。いや、遠出した時に運転代わってあげたい気持ちはあるのですが、いかんせん実力が伴わないものだから、できればそっとしておいてもらいたい、そんな気持ち。

これは、周囲からの期待を責任のように感じてしまう、そんな人によく見られる傾向だといえます。まあ、真面目な人、といってもいいでしょう。「事故っても知らないよー」とか、冗談でも言えない人です。
こういう人は、周りからの期待を裏切ってはいけない、と自戒しているといえます。そして、向こうのがっかりを想像して、自分の評価が下がることまで想像してしまいます。 自尊心が傷ついて、イヤな気分になることを恐れているんです。

この一見クネクネと複雑な思考の回り道をしているかのように思える長いプロセスですが、実は日本人に多い「対人不安」のひとつの類型だとされています。
これが習い性になって、反射的にそう感じてしまうのだそう。

これはもう、そう感じることを止めるのはなかなかに難しい相談です。
なにせ反射的に感じてしまうのですから。
なので、「運転が下手な自分」を笑い飛ばせるネタとして扱うようにするか、そんな話題が出る前に「大変申し訳ないが……」と切り出しておくか、だと思われます。

でも、自分はそんなキャラじゃない、とおっしゃる向きには、やはりきちんとプロに「もう一度教えてもらう」ことをお勧めします。
そう、ペーパードライバー教習という手があるのです。

ということで、第3回は実際にペーパードライバー教習を受けると、どんなふうに気持ちが変わるのか、その内容はどんなものなのか、をご紹介します。
まだまだペーパードライバー卒業へのステップを踏み出せずにいる人は、次回を熟読してからでも遅くはありませんしね。

あ、それから、第0回で募集したみなさんからの「あるある」に関しては、第4回で発表したいと思っております。こちらも合わせてお楽しみに!

テキスト/ドライブトーク研究室(クラッチ渡辺研究員)
監修/神奈川大学教授・臨床心理士 杉山 崇