娘は言った。「もっと強くなって帰ってくる」と。
まさかの進学先だった。小六の娘。12歳だから、まだまだ家で一緒に過ごせると思っていた。でも娘は違った。自分の成長を信じ求めて、スポーツ推薦で、遥か離れた四国に向かうことを決めた。
入寮するのは奇しくも私の誕生日。800kmの道のりをひた走り、入居の荷物を乗せて初めて瀬戸大橋を渡る。窓を開けて風の音に紛れて「もっと…もっと強くなって帰ってくるから…」掠れた声は涙声だったか、風のせいかわからない。私の嗚咽も風に紛れていただろう。運転してるお陰で涙を見せずにすんだ。娘の決意を胸に受け止めて、ハンドルを握り直した。