ドライブに出かける前夜は、まるで子供が遠足前夜に眠れないような気持ちになる。
寝たか寝ないか曖昧な睡眠から目覚め、興奮した気持ちを抑えてシートに滑り込むと、それは私の体を優しく包み込んでくれる。エンジンに火を入れて水温計が上昇するまでの間にドライブコースをイメージする時間が至福のひとときだ。アクセルを軽く踏み込むと、エンジンは冬のピーンと張り詰めた空気を思う存分吸い込んで、軽快な音を奏でてくれるから、音楽などの余計な音は要らない。「ドライバーは演奏者でもあり観客でもある。」そう思いながら室内に程良く届くエンジン音を楽しむ。
目的地は黎明に照らされた雲海が眼下に広がっていた。