私の誕生日は4月。
昔通っていた学校の桜を観に私達は夜を待って短いドライブに出た。
ところがいざ行ってみれば予想外の暗さで桜は全く見えない。
華やいだ気持ちが一転、車中の誰もが微妙な顔つきになっていった。
せっかく来たのだからと車を降りた私は薄暗がりの並木へ歩き出した。
春の風は暖かかったし、近くでみればなるほど桜は満開であるようだった。
ぼんやりとした花影に一頻り目を凝らし、そろそろ戻ろうかと瞬きをしたとき。
背後から上向きに強い光源。
はっとして車の方を振り返れば家族がこちらに手を振っていた。
目の前には淡く色付くたくさんの花毬たちが優しく風に揺れていた。