私は小さい頃から父が運転するクーペでドライブするのが大好きでした。
母の実家の丹後半島へ里帰りすると2人示し合わせたようにEDMやトランス、流行りの曲なんかを詰め込んだMDやらCDやらを車に積み込んで私の大好きなスポットへと出かけたのです。
そこは左には見てるとなぜだか泣いてしまいそうな、吸い込まれてしまいそうな美しい深緑、右には気が遠くなるほどに続く群青の水平線が見渡せる山道で、その間をサンルーフも全開でウーファーの心地よい振動と、緑香と、少し頬をひっつく潮香に心酔しながら風になって走り抜ける──。
これが私の至極の時間でした。
今は亡き父との最高にエモい思い出です。