

自由奔放で勝ち気に育った私が、25歳の時突然病気になった。通院は月に1度県外へ。往復2時間のドライブが父と2人だけでゆっくり会話出来る時間。父は、少年時代や青春の淡い恋の話など色々話してくれた。私の生まれるずうっと前の、青年だった父がそこにキラキラと生きていた。道中、ソフトクリームを食べつつ笑い合えば、「何とかなるさ」と滅入る気持ちも紛れた。診察が終わる頃には美しい瀬戸内海の夕凪が見える。私も歳を重ね、歯痒さや後悔、痛みを少し受け入れられるようになった。この夕凪のように、穏やかで広い心の女性になれるよう。庭で剪定する両親に見送られ、今は一人、queenを流しながら通院ドライブを続けている。