

誕生日の事など頭に無かった。認知症を伴っている母と一緒に買い物、ドライブを兼ねて走る。いつまで母を乗せて車を運転出来るかなと、いつも心に思いながら走らせる。母との会話は私には、どんな音楽より、どんなラジオの語りより心地よい言葉だ。1日でも長生きして一緒にドライブに行けたら、それだけで私の日常は幸せだ。母が私に、いつものように意味の無い会話を語りかけてくる。少し話した後「誕生日だね、おめでとう」と母が照れ臭そうに言ってきた。この人の子供に産まれて本当に良かった。私も、産んでくれてありがとうと母に伝えた。母も笑う。人と車、素晴らしい時間をくれるこの空間が自分は大好きだ。