二十数年前のある日曜の夜。一人暮らし先へ出発する。
初めて家を出る私に、心配性の母はあれこれ注文をつけ、「うるさい、分かっている。」と私は苛立った。
純白のDR30のキーをひねると、独特のタイミングチェーン音とともにFJ20ETが目覚めた。私は、涙で潤む目を見せまいと、「じゃあ、行くよ。」と短い言葉を残し、スロットルを深く踏みつけた。
野太い4気筒DOHCサウンドを響かせ、DR30は豪快に加速を始めた。
どんどん小さくなっていくバックミラーに写る母が、溢れる涙で
見えなくなった。
今は天国の母へ。私を生み、育て、守ってくれて本当にありがとう。