シチュエーション別レポート ~こういう状況でどんな会話をしましょうか~
REPORT 3
旧知の友人と再会した日に!
オープンしたてのショッピングモールに、のんびり電車で出かけてみた休日の午後。ずーっとご無沙汰だった地元の古い友人と、まさかバッタリの再会ですよ!。
「うわー、何してんのこんなところで、え、何年ぶりだっけ?」的な会話はさておき、衝動買いの戦利品をぶら下げていたオレを見かねてか、その友人に地元まで送ってもらうことに。ドラマティックな再会劇は一転して、長時間2人きりでのドライブになったのですよ。
気まずい訳ではなく、話したいことは一杯ある。話さなくちゃいけないこともたくさんある。しかし、ぽつりぽつりとしか言葉が出てこない。いやいやいや、このままじゃダメだ! ぎこちないままでバイバイしたくは、ない!
- 研究室からのコメント
- 今回のCASEで注目したいのは、「旧知の友人」という関係性の微妙さ、です。親近感がありながら直接の利害関係が薄い、そんな相手からはいかに上手に情報や本音を引き出すか、がカギとなります。
研究報告
ドライブトーク研究室ニッサン分室
過去のあるあるネタはいまいち
偶然に出会った昔の友人との会話……、これって実はいろんな他の状況と共通点がありますよね。上京してきた人なら同郷人とバッタリ会うとか、以前勤めていた会社の同僚と10年以上ぶりに会うとか。いつの間にか疎遠になってしまった、でもお互い親しかった過去のある人との再会は、できれば「いいほうに転がしたい」と思える、そんなシチュエーションのはずです。
偶然での出会いですから、タイムリミットは限られています。そんなに長くない時間の中で、お互いの距離を埋めて、というか時間すら埋めてしまおうというのですから、まずは話題の選択に慎重を期すべきかもしれません。
ありがちなのは、「そういえばこんなことがあったね」ネタです。共通の過去の出来事を列挙して「あったあった、そーいえば!」なんて、上手くいけば盛り上がりますし、まあ悪くはないでしょう。でも実は、ココに集中しすぎるのはあまりお勧めできません。それは、盛り上がったところで、距離は昔以上には近づきにくい、という問題があるからです。それに、過去に集中するということは、現在までの「時間の溝」をそのままに置いておくことになり、すると一気に「知らない人感」が増してしまうからなのです。第一、お互いの記憶の齟齬を照らし合わせただけで時間切れ……なんてことにもなったら楽しくないでしょう? さあ、どうしましょうかね?
「変わってないなあ!」を落としどころに
ということで、当研究室では、話題のポイントを過去そのものではなく「現在まで」に置くことをお勧めします。離れてしまったあの頃を起点にして、「あれから、どーしてたの?」と現在までの時間に焦点を当ててみましょう。そんな話題なら、お互いの過去や、それぞれの相手に対する認識なども含めた、多彩な会話が期待できるからです。
古い友人との会話は、実は、お互いを確認し合うことに他なりません。顔と名前が一致するだけではなく、お互いの記憶を紐解いて、「そうそう、こーいうヤツだった!」と確認していくことでどんどんと近づいていきます。これを心理学では「親近効果」と言います。
うっかりすると、自分がどれだけ変わったかを列挙したくなります。分かります。オレってこんなに変わったんだぜ、と語って聞かせ、感心してほしいですものね。でも人というのは、自分の知らない「新しい情報」には、喜びよりも違和感を感じるものなのです。ですから、エピソードそれぞれの落としどころは「変わってないなあ!」でいいのです。美しきワンパターンで攻めてしまっていいのです。っていうか、そのほうが空気が暖かくなることを指摘しておきましょう。
ただし、NGワードもあります。男同士では、どんな親しい間であっても、微妙に牽制しあうものです。ですから、無駄な争いが起きないように、普段はお互いの評価を口にしないようにする習慣がついてしまっています。ですから、いきなり「お前は昔から話がくどかったよな」とか、「相変わらず細かいことを気にしてるんだな」とかの、評価めいたことは言わないようにしましょう。認識による「親近効果」を台無しにしてしまいますからね。
「お前らしいなあ、すごいなあ!」
ここで、もう少し「認識」ということを掘り下げてみましょう。まず、自分にとって「旧知の友人」とはどういう存在なのでしょうか。自分をよく知っていて、褒めてくれると嬉しく感じる人を、心理学では「重要な他者」と位置づけています。過去の自分を知っていてくれているということは、成長した(はずですよね?)今の自分を確認させてくれる相手だからです。過去の起点を知っていてくれるから、いまに至る道のりが明確になるのです。ですから、「重要な他者」なのです。
だとしたら、です。友人にとってもアナタは重要な他者ですから、アナタにかけてもらう言葉も重要になってくる訳ですよね。さあ、どんな言葉をかけるべきでしょうか? そう、ここまでの変化を尊重しつつ、変わってないことを再認識してあげる。そしてそこに関心してる気持ちを添えると、当時からの本人を(会っていなかった時間ごと)褒めることになり、とても効果的です。はい。もったいぶらずに申し上げましょう。20年会ってなくても、一足飛びに昔と同じ親しい気持ちになれる言葉、それは「お前らしいなあ、すごいなあ!」です。
この「お前らしい」のフレーズが、自分を認識している/覚えている、ということを相手に意識させます。会っていなかった時間の間、本当は忘れていたのですが(お互い様ですけどね)、「お前らしい」のひと言で、気にかけてた感は満載となります。そして、「すごいなあ!」というコメントで、ここまでの成長を認め、一緒に喜んでいる気持ちを伝えられます。「すごいなあ」が言いにくいなら、「面白いなあ」や「いいなあ」と、比較的軽い褒めワードや興味を示す言葉でもOK。言葉だけ見ると単純なものですが、でもこのキラーワード、かなり攻撃力があると思いますよ。
苦労話はオイシイ話題
とはいえ、「お前らしいなあ、すごいなあ!」という言葉が、その場を切り抜けるためのインチキフレーズとして使われてしまうのは心外です。このレポートは、みなさんに「よりドライブを楽しんでもらうため」にお届けしているものですから、小手先の便利フレーズを紹介するだけで終るわけにはいかないのです。ですから、キラーワードを心から言えるように、旧知の友人から、情報を引き出しましょう。
もし、相手から今までの苦労話がでてくるようなら、もう、大成功です。「待ってました! それ、大好物!」と心の中で叫んでください。そんな話を聞きながら、相手の苦労話に同情/共感を寄せちゃいましょう。高いところからの批評は不要です。「こうすればよかったのに」とか、「オレも同じような体験をしてさあ」とか、この際忘れましょう。同じ立場に立ち、味方であることを印象づけるだけでOKです。一緒になって怒ってあげればいいんです。そうすれば、友人からはどんどんと「過去から今までのエピソード」がこぼれ出てくるでしょう。
そうやって、お互いの時間と距離が埋まったところで、必殺の「お前らしいなあ、すごいなあ!」です。そこに「オレも頑張らなきゃ」なんてオプションを足してみてください。「見習わなきゃ!」もアリです。ここまでくれば、もう何も言うことはありません。すとーんと、CASE3はこれにて終了です。ただし、紹介した内容を参考にしてもトークが弾まない場合があります。人の好みは変わりますから、友人があらぬ方向に成長してしまっていることだって考えられます。当方では責任を負いかねますので、くれぐれも、ご自分の判断によってご活用ください。はい、いわゆる免責事項のご案内です。
昔、好きだった相手を、再会した今も好きになれるなんて、実はとても幸せなことですよね。ですから、ドライブの短い時間ですが、積極的に「好きを思い出し」てみてください。そうしてくれることが、当研究室の最大の望みなのです。
テキスト/ドライブトーク研究室(クラッチ渡辺研究員)
監修/神奈川大学教授・臨床心理士 杉山 崇
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