投稿日:2021/01/01 投稿者:紅世 さん (長崎県・30代・女性)

コロナ禍で外出がすっかり億劫になった。それまで家族で訪れていた景色の写真を懐かしんで見ていた。誕生日、父が突然ドライブへと誘ってきた。久し振りの事に緊張しつつ隣に乗り込む。会話はあまり弾まず車内は静かだった。着いた場所は小浜温泉だった。海から眺める夕焼けが好きでよく来ていた所だ。海沿いに降り立つと日が沈み始めていた。薄らと残る空の青と赤赤とした陽の光が混ざり、美しい濃淡を生み出していた。
「綺麗だね」「・・・ん」短いやり取りだったけれども十分だった。父はこの場所を憶えていてくれたのだ。胸の内がじんわりと温められる。二人でずっと落ち行く夕陽を見詰めていた。父とのこの時間が何よりの贈り物だった。



