9年前の夏。ソファで大の字に溶ける私は、母に朗報を聞かされる。九州に5泊6日の旅行、我が家なりのゴージャスだ。
父の車を積んだ船は港に到着、胸の高鳴りと車に乗り込んだ。父のドライブといえば、カーペンターズ。しかし刷り込みと反比例して記銘は消えていく。
寂しさを感じながら、時は9年後。小さくなったソファに相変わらず体を預けていた。ふとあの曲を再生してみる。イントロがかかった瞬間、あの頃の鮮明な記憶がフラッシュバックした。
思い出は煙だ。歌は光を発し、柔らかな影を生み出す。人はその影を頼りに忘れ形見を取り戻す。
この曲の原題はクローストゥーユー。思い出は人の心のすぐそばに。