誕生日だからドライブしようと、
娘と夫に急かされて、車に乗り込む。
夕暮れの街を車は山頂へ続くドライブウェイを走ってゆく。
その道は夫と恋人同士の頃、夜景を見にきた道だった。
山頂に着き、車の外に出る。
暗闇に浮かび上がる光の海が、目の前に広がった。
眩い、きらめき。
あの頃、二人で見た光の海を今、家族三人で見ている。
恋人同士のロマンチックな気持ちはもうないけれど、確かな温かいものがある。
それは家族という幸せなのだろう。
車は低いエンジン音を響かせながら、夜のドライブウェイを走る。
その音は安心できて、どこにでも連れていってくれると言っているようだった。