ある日、家先に見た事の無い大きなバイクが止まっていて、父が珍しくランドセルを背負った私の帰りを迎えてくれた。バイクは譲ってもらったらしかった。父は「日曜に二人で海の方行こか」と言い指切りをした。父と二人で遊びに行くのは初めてで楽しみにしていた。けれど出かける事は無かった。
出かけるために出したメンテナンスで修理箇所が見つかり、更に現状でどうしても欲しいと言う人が現れたと説明された。楽しみにしていたのは私だけだったのかと納得できなかったけれど、時が過ぎ忘れていった。
父が還暦を過ぎて、背中も大分小さくなった頃、私は車の免許をとった。「日曜に二人で海の方行こか」と、父から車をプレゼントされた。