

母は免許がないので車を運転したことがありません。
私の運転する車にも乗りたがりません。
移動は至ってバスか、電車で公共の交通機関しか信用しない人でした。
ある日、母が私に黒松内にあるブナの原生林が見たいので一緒に行ってほしいと言われました。
母を連れて電車で行くには少し無理があると思い、車で行くことを提案しました。
初めて、母は何もためらわず笑顔で承諾してくれました。覚えているのは、目的地のブナの原生林を見たことではなく、母と過ごした車の中での何気ない会話ばかり。亡くなった父の好きだった物や、私の幼い頃の思い出話。母とゆっくり話せた大切な時間でした。