毎夏 家族旅行で海へ出掛けたことを思い出す。幼心に、日頃多忙な父の身体が長時間の運転で疲れないか心配で切なくて。鼻歌混じりにハンドルを握る父の姿にほっとしながら。父は日曜日の早朝に、こっそり私をドライブに誘った。そんな時は滅多にない助手席に座る。行き先は父のお気に入りの、近くの喫茶店。父が煙草の煙を薫せながら珈琲を楽しむ横で、私はミックスジュースを頼んでもらい、嬉しくてたまらない。弟たちや母に内緒だと約束し、また助手席にちょこんと座り帰るのだ。家で待つ母は微笑んでいて、全てお見通しなのだけれど。父との時間を誕生日の今日、父の月命日を前に思い出し、胸をきゅっと掴まれた。